平成15年8月
資料:(財)日本土壌協会

「無洗米と普通米の環境影響評価」(その1)の概要


はじめに

無洗米は従来の普通米に付着・残存している肌ヌカを除去してあるため、米のとぎ洗いをしなくても、そのまま、水を加えるだけで炊飯が可能になっている。本報告では無洗米と普通米を比較して、1.米とぎ操作の有無による汚濁物質発生量の違い2.汚濁物質の下水道における浄化能3.製造・利用の過程におけるエネルギー消費量と二酸化炭素発生量の差異を明らかにした。

1.米とぎ操作による汚濁物質発生量
今回の汚濁物質発生量に関する試験では環境省が実施した試験と同一の米450g当たり3.5の上水を用いて調査した。試験は市販の普通米A、 B 、Cの3点および無洗米 1点の合計4点について検討された。無洗米はBG精米製法による無洗米を使用した。
我が国における1人1日当たりの米消費量166gからとぎ出される普通米のBOD、COD、SS、全窒素、全リン、 n-ヘキサン抽出物それぞれの量は、下表上段の通りでかなり高い負荷量を示した。一方、1回洗いの無洗米の場合は、下表下段の通りとなり、普通米の1〜5% にすぎない著しく小さい負荷量であることが認められた。
尚、無洗米は洗わずに使えるので、その場合は全ての数値が0になる。
 
普通米166gの洗米時にとぎ出される汚染物質
単位 mg
  BOD COD SS 全窒素 全リン n-ヘキサン
普通米 2,582 1,181 1,955 84 84 406
1回洗いの無洗米 103 36 56 4 1 4
洗わない無洗米 0 0 0 0 0 0

2.汚濁物質の下水道における浄化能

上水道および下水道がほぼ完備しているY市(人口350万人)と簡易水道が主体となり下水道普及率がゼロで農業集落排水の利活用が始まっているN町(人口6,872人)における流入水・流出水の水質・汚濁物質の除去率について検討した。Y市で標準活性法処理による汚濁物質の除去率をみると、次頁上段の通りでBOD、COD、SS はほぼ90%と高いが、全リン、全窒素は50%台と、除去効率の低いことを示している。N町における流入水の水質の濃度はY市に比べ各項目ともかなり低いが、BOD、COD、SS の除去率はY市のそれとほぼ同等であり、全リンで71%、全窒素で54%を示し、Y市に比べると全リンの除去率が高い。これはN町では凝集剤として、塩化第二鉄を使用していることに起因する。
普通米のとぎ汁を未処理のまま放流、あるいは処理後放流した場合の水質について試算してみると、処理によってBOD、COD、SS は大部分、除去されるので汚濁物質の残存量は未処理に比べ1 / 10 以下になり、無洗米の場合に近くなることが認められる。ただし、全窒素と全リンの残存量はそれぞれ、米166g当たり40mgおよび 24mg〜38mgとなり、無洗米に比べ10倍以上が残っている。
無洗米の場合には下水処理上、問題になる物質がほとんど除去されていることを示唆している。
 
普通米166gのとぎ汁のY市、N町下水道における汚濁物質除去後の残量及び除去率
単位 mg
  BOD COD SS 全窒素 全リン
Y市 116 (96%) 131 (89%) 49 (97%) 41 (51%) 38 (55%)
N町 142 (95%) 202 (83%) 57 (97%) 39 (54%) 24 (71%)

3.無洗米・普通米の製造・利用におけるLCA

普通米の米とぎには、上水と下水の使用量が関係することから、Y市の上水と下水、N町の上水と集落排水の1m3当たりならびに人・日使用量当りの発熱量とCO2排出量を算出した。
無洗米の製法は多様であるが、今回採用した製法では、エネルギー源として電力のみの使用であり(肌ヌカ処理の段階で灯油、水の使用がある)、米166gを製造するのに発熱量10.468kcal、CO2排出量1.766gであった。普通米の場合にはとぎ汁の汚濁物質濃度が高く、そのままでは下水での処理が困難であり、とぎ汁1.3を水で希釈して13.6にする必要があるとみなされた。これらの量の上水と下水を処理するために、Y市の場合には無洗米製造に比べて発熱量が2.53倍、CO2排出量は2.78倍高い値が必要であり、同様にN町の場合には発熱量とCO2排出量ともに約70倍と極めて高い値が必要であることが認められた。

普通米166gを洗米し、とぎ汁を処理する時及び無洗米製造時の発熱量・
CO2排出量
  発 熱 量 Kcal  CO2排出量 g
Y市の場合 26.484 4.921
N町の場合  719.624 123.432
無洗米製造
(肌ヌカ処理を含む) 
10.468
(21.165)
1.766
(4.702)

結 論

無洗米の利用は少なくとも今回採用した製法では(他の製法は今回は試算していない)普通米に比べて環境負荷の低減効果が顕著であることが示唆された。
また、有機質肥料などにそのまま利用できる肌ヌカの処理まで含めた無洗米のエネルギーの使用量は、普通米のY市の例とほぼ同等の発熱量、CO2排出量である。すなわち、ほぼ同じエネルギー量を使うことで、無洗米の方が、上水の節約、肌ヌカ加工品の生産等具体的な付随効果があり、エネルギーを有効に使っているといえる。無洗米の環境負荷の低減効果が明確にうかがえた。

主要参考文献
1)(社)産業環境管理協会(1999):LCA実務入門
2)(財)日本エネルギー経済研究所:エネルギー・経済データの読み方入門
3)(社)日本下水道協会(2001):下水道における地球温暖化防止実行計画策定の手引き
4)工業調査会(1998):LCAのすべて
5)農業環境技術研究所(2000):農業におけるライフサイクルアセスメント


<図表>

無洗米のライフサイクルフロー

普通米のライフサイクルフロー


とぎ汁の水質  (mg/米166g:日・人平均消費量)
BOD COD 全窒素 全リン


とぎ汁汚濁物質の除去効果(全体)
とぎ汁汚濁物質の除去効果(全窒素、全リン)


米の発熱量(人・日)


米のCO2排出量(人・日)

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